YOON&YANG

9月16日、韓国公正取引委員会の新委員長として朱丙起 （チュ・ビョンギ）氏が就任しました。 正式任命に先立ち、同月5日に国会で行われた人事聴聞会において、朱氏は今後の公正取引委員会の運営方針についての考え方を示しました。前政権下で縮小された企業集団の監視機能を大幅に強化することや、フランチャイズ加盟店主や中小企業など経済的弱者の交渉力向上を主要課題として掲げています。特に、大企業集団による私益追求行為や不当な支援に対する規制を強化する一方、オンラインプラットフォームの独占に対する規制については外部環境を考慮し、慎重に対応する方針であることを示唆しました。

1. 背景及び政策方針

2. 大企業への監視強化および経済的弱者の保護

3. オンラインプラットフォーム規制戦略

4. 示唆

1. 背景及び政策方針

朱丙起 （チュ・ビョンギ）公正取引委員会委員長（聴聞会当時は候補者）は、5日に行われた国会政務委員会の人事聴聞会において、「革新的な企業は積極的に育成し、不公正な搾取や私的利益のために経済力を濫用する企業集団については厳正に対処する」と述べ、今後の公正取引委員会の運営における重要な方針を提示しました。

同氏は 、「韓国は経済先進国になったものの、少数の大企業グループへの経済力の集中や、大企業と中小企業間の格差により、構造的な不平等が深刻化している」と指摘し、市場システムの見直しの必要性を強調しました。これは、前政権下で比較的緩和されていた大企業規制が今後再び強化される可能性を示唆するものです。

2. 大企業への監視強化および経済的弱者の保護

ア. 企業集団への監視体系の拡大

同氏は、前政権発足後に縮小された企業集団局の再拡大について、前向きな姿勢を示しました。また、制裁の実効性を高めるために「制裁の重さは、当該行為によって得られる利益を上回るほど十分なものでなければならない」と述べ、強力な制裁を通じて実質的な抑止効果を確保する意向を明らかにしました。

特に高麗亜鉛社がオーストラリアの子会社を通じて迂回買収を行ったことを例に挙げ、「循環出資や相互出資に関する法律に抜け穴（loophole）がある」と指摘し、海外企業を通じた迂回的な支援を遮断するための対応策も講じる方針を示しました。

イ. 経済的弱者の保護政策

同氏は、フランチャイズ加盟店主に団体交渉権を付与することに積極的な支持を表明し、「加盟店主や代理店主の交渉力を強化するために、団体結成権などを付与する必要がある」と述べました。これに伴い、団体登録制度の導入や協議拒否時の制裁根拠の新設など、具体的な考えも示しました。

また、「技術の不正流出など、中小・ベンチャー企業の成長基盤を損なう不公正な慣行を根絶する」と述べ、下請取引における不公正取引行為に対する監視および制裁の強化にも意欲を示しました。

3. オンラインプラットフォーム規制戦略

ア. 独占規制及び公正化規制への異なるアプローチ

同氏は、オンラインプラットフォーム規制について、二元的な戦略を提示しました。オンラインプラットフォーム独占規制法については、国際的な交渉など対外的な問題を考慮し、慎重に対応する必要があると述べました。

一方で、プラットフォーム事業者と出店事業者との取引関係を扱うオンラインプラットフォーム公正化法については、通商問題とは別の事案であり、国内特有の現実を反映した問題であるとして、積極的に推進していく意向を示しました。

イ. 配達プラットフォーム規制の強化

配達プラットフォームについては、手数料の上限制度の導入に前向きな姿勢を示し、「無料配達」という広告の不公正さを指摘し、実効性のある対策を講じる方針を示しました。また、現在、大規模な事件にも適用されている同意議決制度については、「小さな事件を迅速に処理するために用いるのが望ましく、大規模な事件には適切でない」と評価し、制度改善の必要性を明らかにしました。

4. 示唆

朱丙起委員長が、候補者の立場で示した考え方を総合してみると、今後の公正取引委員会の政策方針に大きな変化が予想されます。

大企業グループは、企業集団局の拡大や制裁レベルの強化により、これまで以上に厳格な監視を受けることが予想されます。循環出資、私的利益の追求、不当な支援などに対する監視が強化され、海外子会社などを利用した迂回的な手法に対する規制導入の可能性も高いことから、全体的な内部取引構造や支配構造の再点検が求められる。

フランチャイズおよび流通業界においては、フランチャイズ事業法の改正により、フランチャイズ店主の交渉力が大幅に強化されることが予想されます。そのため、フランチャイズ本部は従来のように一方的な契約条件を提示するのではなく、加盟店主団体との協議を経て契約を締結する必要があり、この過程でフランチャイズ手数料や営業条件など、事業全般にわたる構造的な変化が避けられない見通しです

プラットフォーム企業は、規制に対する二元的なアプローチを明確に認識し、対応する必要があります。独占・寡占規制は現状が維持される可能性がありますが、出店事業者との関係においては、より強化された規制が適用される見通しです。

今後、公正取引委員会は大企業への監視機能を大幅に強化し、経済的弱者の保護を重点的に推進すると見られます。企業は、こうした政策の変化に先手を打ち、コンプライアンス体制を整備するとともに、公正取引リスクの管理を強化する必要があります。

法務法人（有限）和友の公正取引グループは、公正取引業務を専門とする50名以上の専門人材が、「独占規制及び公正取引に関する法律」、「下請取引の公正化に関する法律」、「フランチャイズ事業取引の公正化に関する法律」、「大規模流通業における取引の公正化に関する法律」など、あらゆる公正取引分野にわたり、コンプライアンスの事前チェック等のアドバイス、公正取引委員会調査への対応、行政訴訟、刑事訴訟、民事訴訟など各種争訟に対するワンストップサービスを提供しております。  公正取引分野でご相談が必要な場合は、いつでも法務法人（有限）和友の公正取引グループまでお問い合わせください。